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アライ先生インタビュー(5) 多様な文化が共生する新宿区で、「多様な性」への理解が進むようリード&フォローする

鈴木智子さん 新宿区教育委員会事務局指導主事

(2021.08.24)
 

鈴木智子さん
新宿区教育委員会事務局指導主事

大学卒業後、東京都内の小学校教員として16年間勤務。2021年4月に新宿区教育委員会事務局に異動。教育の現場から、それをリードしサポートする教育委員会へ。その立場は代わっても、「教育委員会として現場の先生、子どもたち、保護者の方々を手助けできるよう頑張りたい」と教育にかける情熱は変わらない。

 

新宿区における「多様な性」に関する取り組みは、保健主任研修会で始まる

 

「新宿区教育委員会が、初めて『多様な性』に取り組んだのは、2016年度の保健主任研修会でした」

と語るのは新宿区教育委員会の指導主事を務める鈴木智子さん。鈴木さんは、2021年3月まで小学校教諭として現場に勤務。教員として16年の経験をもつベテランでもあります。

「新宿区では『多様な性』について養護教諭が担当していることが多く、第1回目のこのときは大学の先生を講師に招いて開催されました」

新宿区教育委員会の「多様な性」に対しての取り組みは、国や東京都の動向とリンクするように年々進んでおり、2018年度には、人権尊重教育推進委員会が性同一性障害をテーマにしたリーフレットを発行しています。

「リーフレットは情報提供するだけでなく、『学ぶ』きっかけになってほしいので、タイムリーなものを、今後も企画したいと思っています」

リーフレットには、「更衣室やトイレに配慮するようになった」「宿泊行事の際の入浴の仕方を考えるようになった」「子どもたちが相談しやすい環境づくりの大切さを知った」などという声が寄せられているそうです。

その2018年度からは、毎年の夏季研修会において「多様な性」を取り上げるようにもなりました。研修会には新任の先生や中堅の先生が大勢参加します。継続的に実施することにより、「多様な性」について知っている先生が着実に増えています。

 

現役の教師時代にも「多様な性」に向き合う

 


東京都では、世界をリードするグローバル都市として発展を続けていくために、日本人と外国人が共に活躍し、共に支え合う社会(東京における多文化共生社会)の実現に向けた取り組みを進めています。新宿区はそんな東京都の中でも特に、外国籍の子どもや保護者のルーツが外国にある子どもが多い地域の一つです。多様性理解についてはある主の土壌があるといえるのでしょうか。

「この春まで現場で働いていた者としての印象ですが、男女混合名簿や男女別の色分けの撤廃など、教育現場においての『多様な性』を前提とした取り組みは徐々に成果が上がっていると思います。とはいえ学校や地域によってバラつきはあるのも事実です。だからこそ学校の先生、子どもたち、保護者の理解度がアップするよう働きかけ続けることが大切だと痛感しています」

そんな鈴木さんも、現役時代に教え子から相談を受けたことがあるそうです。

「パンツルックが好きだった児童から、中学進学前にスカートを履くことに対して相談を受けたことがあります。その子は誰に相談してよいのか分からず悩んでいたそうです。教師としては、相談してくれたことはとてもうれしかったのですが、相談できず悩んでいる子どもたちがいることを知り、『多様な性』が身近な問題であり、教育に携わるものとして避けて通れないことを実感しました」

 

「多様な性」の理解度が進むようリード&フォローし続ける

 

新宿区教育委員会としては、「多様な性」を今後どのように取り扱っていく方針なのでしょうか。

「教育委員会に転任し、現場のときよりも広い視野をもって『多様な性』に取り組めるのは、私個人にとって良い経験になると思っています。現場にいたときは自分が勤務していた学校や、その周囲の学校の取り組みを耳にしたり、目にしたりすることしかできませんでしたが、今は新宿区全体の学校や地域の取り組みを見聞きできます。その中で参考になる事例がたくさんあるので、それを新宿区全体に広げていけば、『多様な性』に対しての理解度も深まると期待しています」

最後に今後の抱負をおうかがいすると

「学校関係者には、児童・生徒が一人ひとり自分らしく成長できるようにするためにも、『多様な性』について正しく理解したうえで、できることを考えて取り組んでほしいと思っています。教育委員会としては、先生方に正しい理解が進むように研修などの活動を通じてリード&フォローしていきたいです」

という力強い言葉が返ってきました。これからも新宿区教育委員会の活動に注目です。