小野アンリさん
Proud Futures 共同代表
元小学校教員。2008年から1000回以上の研修やワークショップを学校現場や子どもに関わる専門職等を対象に実施。LGBTQ+の子ども・若者や、家族、教職員への相談支援や、LGBTQ+インクルーシブな学校作りのコーディネート、性の多様性におおらかな価値観を児童・生徒に育むための授業を作る支援などを行う。第3回「にじいろ子ども応援団」勉強会&交流会(後編)
前編に引き続き、小野アンリさんにご登壇いただいた、第3回「にじいろ子ども応援団」勉強会&交流会の様子を私の感想と合わせてご紹介します。
③標準服・制服の選択制について
最後のテーマは、標準服・制服の選択制についてです。
制服の選択制という話が出てきた当初は、「LGBTQ+のための配慮」が前面に打ち出されていました。しかし、制服選択制にはLGBTQ+のための配慮」以外にも様々な意義があります。費用面や寒暖差への対応の難しさ、そして「洗いにくい」など衛生面の問題などの面からも、制服の選択制について考える必要があります。
そして、制服の選択制について最近気になっていることが3点あります。
1点目は就学前・小学校の状況について。制服の選択制は就学前や小学校でも考えるべき課題ですが、関係者の方に必要性を感じていただけていない現状があります。
また、「制服選択制」があったとしても限定的な「選択制」となっている場合が散見されます。例えば、男子生徒の選択肢が少ないこと。「選択制」と言いつつ男子はスカートを選べない仕組みがあります。こういったことは、子ども達は価値観を育むにあたって、非常に重要な問題となります。そのため、標準服・制服の選択制というのは、まず「性別にかかわらず誰もがどの制服も選べるシステム」である必要があり、かつ「どの制服を選んでも安心安全に過ごせる環境づくり」の2つをセットで行っていくことが重要です。
次いで2点目は、トランスジェンダーの子ども達の選択肢が狭まってしまわないかという懸念です。「スカートで学校に行きたい」というトランスジェンダー女性の生徒の希望に対して「女子もスラックスを穿いているからスラックスにするように」と対応し、結果その子が希望しない制服を選ばざるを得ない状況になるといった事例もあります。本来は、すべての子どもの性自認や性表現が尊重されることが何より大切です。
そして3点目は、制服を選択制へ移行する際の移行のしかたについてです。マイナーチェンジや生地から見直すなど、選択肢の設定は様々ありますし、何より、移行には誰が何を選んでもよい雰囲気を作るための工夫が大切です。市町レベルで一度に標準服選択制に移行した例もありますが、まだ多くはありません。ひとりでも多くの子どもの学校生活がより良いものになるように、ひとりでも多くの「この子に間に合った」のために、できるだけ早く制服選択制に取り組む必要性があります。
講演後
講演の後は、参加者からの質疑応答や感想を交えた小野さんとの交流時間でした。
「制服をとりやめて私服にする際の検討ポイント」や「どこに呼びかければ制服は変えられるのかなど」制服選択制についての話題が多くありました。
また、小野さんご自身の講演やイベントでの体験談で伺い、特に保護者の方から「知りたいとは思っていたが、多様性について学べる機会がなく、子どもにちゃんと話せるようになりたい」「子どもに差別をするような人になってほしくないから機会があってよかった」という声をもらったとのことでした。「正しい情報を知る機会」があることの重要性を感じざるを得ません。
今回は、LGBTQ+の子どもと向き合う際の「聴く側」の考え方の解し方や子どもたちが学校環境で直面しやすい制服選択制についてなどのお話や、今後役立つ書籍や対応事例、そして相談窓口に至るまでいろいろご紹介いただき、大変有意義な2時間となりました。