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実践レポート|絵本「これがじぶんのいろ」シリーズを活用した保護者による読み聞かせ

(2026.08.18)
愛知県にある知多市立岡田小学校では、地域住民による読み聞かせグループ「ととろの部屋」が定期的に活動を行っています。今回、性の多様性をテーマとした絵本『これがじぶんのいろ』シリーズ(ゆまに書房/認定NPO法人ReBit翻訳・監修)を活用した、5年生への読み聞かせの実践を取材しました。

絵本「これがじぶんのいろ」シリーズとは?


 

性の多様性やジェンダー平等をテーマに、自分らしさを大切にするヒントが詰まった絵本です。学級文庫や読み聞かせでの活用は子どもたちへの肯定的なメッセージとなり、授業に取り入れることで、公平・公正や多様性について深く考える契機となります。
今回、5年生に向けて読み聞かせが行われたのは、シリーズの一冊『むらさき!これがじぶんのいろ』です。



選書の背景にある保護者としての願いや高学年への読み聞かせのポイントを「ととろの部屋」の竹内さんに伺いました。

 

今回、性の多様性をテーマとした絵本「これがじぶんのいろ!」シリーズを子どもたちに読んでみたいと考えた背景には、保護者としてどのような思いがありますか?

自分が好きなものを好きと言える世の中であってほしいと思っています。どの色が好きでも、どんなものが好きでも、自分の「好き」を大切にしてほしい。そのためには、一人一人がお互いのちがいを大切にして、いろいろな人がいると知っていくことが大事だと思い、この絵本を選びました。読んだ本が今すぐ響かなくても、後からジワジワと効いてきたり、何かの拍子に思い出したりと、「未来へのお土産」になればと思っています。
普段の関わりが深い先生や家族だけではなく、絵本の読み聞かせを通じて、地域の大人も性の多様性の話を届けることができる、そんな風に感じています。

3冊の中で、5年生に向けて「むらさき!」の絵本を選んだ理由を教えてください。

どちらかの色だけを選ばなくていいという展開や、「みんなちがってみんなすてきであること」「だれもがたった一人の特別な自分であるということ」など、子ども達に伝えたいことがたくさん盛り込まれていて、「むらさき!」を選びました。

普段の読み聞かせの中で意識されていることはありますか。

「いろいろな絵本を紹介したい」「図書館に行く子どもを増やしたい」そんな思いをもって、笑える本も考えさせられる本も、新しい本も昔話も、毎度悩みながら読み聞かせの絵本を選んでいます。
今回は、主人公の気持ちの浮き沈みを感じてもらえるように、行間を意識してゆっくりめに読みました

黒板に掲示した3つのメッセージにはどんな意図がありましたか?

「今までこんな事、言った事なかったんだけどさ。今日は3つのお約束があります。」と紙を貼って、3つの約束の説明をしてから絵本に入りました。

今回、性の多様性について読み聞かせをするにあたって、どういう語り口で絵本に入っていこうか悩み、調べているうちにグラウンドルールとかフロアルールと呼ばれるものの存在を知りました。
「変なの」「えー、おかしいって」という他の子の何気ない発言を聞いて、「自分は変なのかな、おかしいのかな」と感じてしまうことを避けたかった。この読み聞かせの場自体が安心して過ごせる時間になるよう、共通の約束事として子どもたちに伝えました。また、1人に話した事が数日後に学年中に知れ渡ってしまうことが私自身にもありました。「『パス!』『わからない』『言いたくない!』と言ってもいい」 「気になる事があっても、その人が話したくない事は無理に聞かない」というのは、性の多様性に限らず、日常の暮らし全般に言えることだと思います。

子どもたちの反応はどうでしたか。

読み聞かせ中、チラチラと子ども達の様子を気にしていましたが、ふざけたりせずに真剣な表情で聞いてくれているのでうれしく思いました。


「花束」みたいだね - 担任の先生が伝えた思い

  
竹内さんの読み聞かせが終わった直後、担任の河合先生は子どもたちに向けて静かに、しかし熱を込めて語りかけました。
 
先生「先生がみんなに一番大切にしてほしいのはね、『自分のことが好き』という気持ちです。 絵本のなかの『むらさきの子』も、自分のことが大好きだったよね。でも、パーティーに行ったときはどうだった?」

子どもたち「困ってた」


先生「そうだね。青かピンクかを決められなくて、『自分は周りと違うんだ』って悩んだんだよね。でも、あのむらさきの子は、間違っていたのかな?」

子どもたち「ううん、間違ってない!」


先生「間違ってないよね。ところで、このクラスの学級テーマって何だっけ? 『花束』だよね。 先生ね、この絵本を見ながら『あ、このクラスの花束と同じだな』って思ったんだ。みんながそれぞれ、自分だけの素敵な色を持っている。 繰り返しになるけれど、まずは自分の色を好きになってほしい。そして、周りの人の色に対しても『それ、いいね!』って認め合えたら、このクラスはもっと素敵な花束になると思いませんか?」

この学年は前年度に「やさしい岡田地区を考える」というテーマで総合的な学習の時間に取り組み、誰もが暮らしやすい地域について住民と共に考えてきました。その過程で子どもたちが育んできたのは、単にちがいを「認める」だけでなく、多様な価値観を新たな発見として「おもしろがり、共に楽しむ」姿勢です。学級テーマ「花束」にも同様の思いが込められているように感じました。また、「むらさき!」の絵本に込められたメッセージは、個性を響かせ合いたいという子どもたち・担任の先生の願いと、見事に合致していたように思います。
見学した小嶌校長先生は、「子どもたちの真剣な眼差しから、登場人物の葛藤を自分事として深く受け止めている様子が伝わってきました」と感想を伝えてくださいました。校長先生はすでに、職員室に本シリーズを常設し、教職員がいつでも手に取れる環境を整えているとのこと。「今後は読み聞かせにとどまらず、この絵本を基軸にした授業づくりにも挑戦したい」という前向きな言葉に、岡田小学校が目指すこれからの教育の姿が見えました。


取材を終えて|ReBitスタッフより

絵本という媒体を通じて、保護者や地域住民が学校教育のパートナーとして子どもたちに豊かなメッセージを届けられる――そんな読み聞かせのもつ大きな可能性を実感しました。
地域住民の読み聞かせを起点に、担任の先生が学級づくりで大切にしたい思いを伝え、校長先生が性の多様性に関する授業実践への一歩を踏み出す。岡田小学校が大切にする「ちがいをおもしろがる」文化が、絵本をきっかけにしてさらに深まっていく瞬間に立ち会えたことを、心から嬉しく思います。
竹内さん、そして岡田小学校の皆さん、素晴らしい実践をありがとうございました!

 

絵本を活用した先生へ

 絵本「これがじぶんのいろ」シリーズは、ReBitが作成した補助教材を無料で授業づくりに活用することができます。
▼補助教材のお申込みはこちら
 https://rebitlgbt.org/jibun-no-iro/
▼補助教材の内容
  • 指導案
  • 授業用の提示資料
  • ワークシート
  • 動画教材 等
補助教材は小学校低学年~高学年~中学生まで、校種や学年に応じて様々なバリエーションをご用意しています。読み聞かせはもちろん、授業づくりでもがぜひご活用ください!