Ally Teacher's School > 記事を読む > 第9回「にじいろ子ども応援団」勉強会&交流会(後編)
 

松尾ゆみさん

NPO法人共生社会をつくる性的マイノリティ支援全国ネットワーク(共生ネット)
行政や教育機関で講師として登壇。

 

第9回「にじいろ子ども応援団」勉強会&交流会(前編)

 

子どもがカミングアウトしてくれたとき、大人には何ができるでしょうか?
もちろんカミングアウトの経験は一人一人異なるものですがだからこそ様々なケースの一つ一つから得られるヒントがあるはずです。
第9回にじいろ子ども応援団勉強会&交流会 では、「子どもからのカミングアウト〜~どう受け止め、どう向き合う?~」と題して、トランスジェンダーの子をもつ講師松尾ゆみさんのお話をうかがいました。

その様子をダイジェストでお送りします。

松尾さんとReBitと参加者によるトークセッション
●LGBTQに関する情報がどのタイミングにおいても重要だったでしょうか。
いつ誰がどういう情報を得られることが重要ですか。
松尾:一番最初その全然知識がない中で、「性別違和なのかな?」と漠然としたまま、保健の先生に相談した時もお互い情報がなかったし、母親という立場で調べて情報を得ても子供に情報がなかったということをわかっていなかったこともあった。

●「あの時こういうふうにして欲しかった、すればよかった」ということはありますか。
松尾:子供が高校のとき、私がどうやっても学校が変わってくれないとということがあった。
小学校でひとり遊びをしていた時に、その時から「ありのままでいいんだよ」と声をかけてもらっていたらよかった。
学校から知識や情報を教えてもらえていたらよかったと思うので、地域の教育委員会にお願いしているのは親も情報が欲しいということです。
私が初めて行政に相談した時に親が情報を得られるものはあるか聞いたら返答は「ない」でした。
知識がない親が取り残されていると、そのまま高齢になっていってしまい理解がなかなかうまく進まないということもあるのではないかと思っています。
だから親にも情報が大事です。
●そうですね、親も子供も先生もあらゆる立場の人が情報が足りていない。
必ずしもセクシュアリティの話ではなく「自分らしくていいんだよ」「人と違ってもいいんだよ」と伝わると、「大丈夫だと」思える子どもが増えるのではないかと伺っていて思いました。

●子供さんは、手術や治療の情報はあったのですか
松尾:子供が高校生になってからはインターネットなどで検索ができたが、何より「生きている当事者」に会えたいうことがとても大事だった。
トランスジェンダー男性のための雑誌を見てうちの子供もこういう風になれるんだと思いました。
●生の声や出会いは力を持っているんですね。

●高校卒業後に校長先生が変わってお話しされたことについて疑問や反発はありましたか。
松尾:もちろん疑問があったが、とてもいいお話ししてくださってよかったと思っている。
この後もこの先生は別の学校に赴任されたりしたが学校に講演に呼んでくださった。
●先生との出会いもあり、先生という立場の人がリードしてくださることによっていく先々で変わっていくんですね

●高校入学前に子供さんに改名して入学するかと話したきっかけや気持ちはありますか。
松尾:性別違和について情報を得て、これだけ苦しんでいるんだということがわかって、一年くらい期間がありました。
子供の悩みがわかって子供の味方になろう応援しようとこれくらいのことしかできないが応援してあげようと自然に変わっていったんです。

●実際に学校で配慮してもらえたら嬉しかったことはなんですか
松尾:嬉しかったことではなく、、、最低限人間としてトイレに入れていたらと思っています。
●そうですよね、生活の基盤、まず日常生活が送れるかというところですよね。


●子供さんが一番最初にカミングアウトしたのは誰で、なぜその人だったのかご存知ですか。
松尾:最初に中学2年生の時に付き合った女の子とお母さんです。
伝えたら「私は人を性別で判断しないから」と言ってくれたそうです。
高校に入った時もその時の彼女のご両親に伝えたが、その日から一切、家庭でうちの子供の名前を出すことは禁止になったがそれでも付き合ってくれていました。
●絶妙な距離の遠さがあった方がいいやすいのかもしれないですね。
それぞれが色々な思いを抱えておられてたのではと思います。

なないろほたるという居場所作るをされているそうですが、LGBTQ以外の方を受け入れるにあたって大切にされていることはありますか。
松尾:なんの知識もなく入ってきた人もいらっしゃるので、参加いただく当事者の人には「この場の中では気になることや嫌なことが言われるかもしれないが、この場だけでは理解をしてほしい、間違いをみんなで直していきたい」と言って理解を得ている。
あえて傷つけない言わないではなくここで勉強しよう!と伝えています。
●確かに。「間違っているかもしれないが」「聞いてもいいかわからないが」「誰に聞いたらわからないんですけど」などと言って質問をしてくださる方がいらっしゃいます。
しかし当事者でも自分のセクシュアリティ以外については知らないことも多いのでそういった安心できる学びの場が大事ですね。

●受け持ちの生徒からカミングアウトされており、卒業式の服装について相談を受けている。
親御さんに伝えて自分の性自認にあった制服で卒業式を迎えたいという気持ちがあるそうですが、まだ親御さんには言えておらず、どちらかというとテレビなどでLGBTQの話題を見ると否定的な意見を言う親御さんで中々カミングアウトできないそうです。

一人で親に伝えるのが難しいなら理解のある大人が同席して伝えることもできるが、良い伝え方はありますか。
松尾:日常の中で親御さんは全く気づいてないんでしょうか。
理解してくれる先生が学校にいてくれて本当に良かったと思います。
私は親の立場ですが、その子が思う通りに過ごしたらいいのにと思いますが、親御さんがどう思うかと、クラスの周りの子も全く知らなくて、いきなり服装が変わるなどしてビックリしないかそれにより周りが敵にならないかが心配です。
先生が心強いサポーターなので先生と一緒に親御さんに伝えるというのは心の安定になると思います。
その際に知識がない、情報がわからない場合もあるので、冊子や親の会の情報と一緒に伝えたらいいかもサポーティブな体制になると思います。
●最終的に親御さんにいうか言わないかは本人が決めることですが、テレビで見たLGBTQの話題に差別的な発言をする人でも我が子となると受け止め方が変わるかもしれません。
いざ自分ごととなった時に親御さんがどう考えてもらえるのか結構蓋を開けてみないとわからないですが、是非、カミングアウト後も卒業までの身近い期間だがその生徒さんの様子を見てほしいと思います。
家庭でカミングアウトした後に、居場所がなくなったり、親御さんと仲違いして高校の学費を出してもらえないなどその子の生活や命が脅かされないようというのが心配です。
その辺りが大人の目が届くのがいいなと思います。

●誰に相談したらいいのかわかりません。
スクールカウンセラーや先生には伝えてあってトイレなど色々な配慮提案してくださってありがたいんですが、専門家に相談する場合の専門家とはなんでしょうか。
自分で調べるしかないんでしょうか。
ReBit:ReBitの運営サイトで相談先や居場所の一覧をご用意していますのでぜひご活用ください。

相談先を探す




●地域で支えていく仕組みを作っていくには何が大切ですか。また、難しい問題はありますか。
松尾:私の話は、私が当事者ではなくて子供の話だというのが難しいと思っています。
私の話はいくらでもするが子供について、あまり詳細がわからないように工夫するのが難しいですね。
また、地域の特性や昔ながらの地盤の繋がりが濃い地域の場合は、難しいと感じます。
●地域の特色によって難しいが、住民以外にも行政職員や企業の社員などいろんな立場の人がいるのでそう言う人たちも巻き込んで行けたらいいですね。
地域の中で変わった事例を見ると学校や企業、議会が変えていったこともありますし。 

●中学校内で授業や掲示物などで伝えていますが、保護者に伝えるのが難しいと感じています。
保護者に伝えるのはどうしたらいいでしょうか。
松尾:折角授業を受けても家庭で話すと否定されることがあると、子どもたちも言えないですよね。
学校で学んでいることなので怪しくないと保護者に伝えるために冊子を配って持って帰るようにできたらいいのではないでしょうか。
●入学説明会など殆どの保護者が集まる機会に勉強会をくっつけるといいと思います。
学校公開日にぶつけて保護者も聞く機会を作っている学校もあります。

●インターセクシュアルについてはどう考えていますか?
ReBit:インターセックスとは言わずに、性分化疾患などいろいろな呼び方があったり、性分化疾患のかでも色んな状態があるのでそれぞれの立場があるので一概にこうとは言えず難しいですし、当事者の声を聞かないとわからないですね。
性分化疾患当事者にもLGBTQの方もいるので、隣接するテーマだとは思いつつそれぞれの特有の課題があると思うので一緒に勉強していきたいと思います。
生まれた時にどのジェンダーを割り当てるのかに関しては、医療的ケアが必要な人もいるので必要に応じて必要な医療機関や情報に繋がれることが大事だと思います。
特に保護者がどうやって情報を得るかが大事ですね。
広い話になるがトランスジャンダーであってもLGBであって性分化疾患であっても、性別の男女の区別や枠組みが狭いと困る人が増えるともいます。
シスジェンダーのヘテロシェクシュアルの方も同じような場合があります。
「自分はこの枠組みに当てはまらない」と思った時に疎外感を感じることがありますし、枠組みを外したり柔軟にしたりすることが社会全体でできていくと、どんな体の特徴で生まれてもどんなせどんなセクシュアリティで生きていっても自分らしく生きていくことができます。
そのために学校や医療機関、専門知識がある人から情報発信していってもらったら安心できると思います。
正しい情報にできるだけ早く繋がれるのことが大事で、これは、セクシュアリティ、ジェンダー、障害、身体の作り、病気、国籍、ルーツなどなどいろんな要素においても言えることです。


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ライター:認定NPO法人ReBit