Ally Teacher's School > 記事を読む > アライ先生インタビュー(2) 「喫緊の問題ではないでしょ」という校長が、ついに「じゃあ、まず職員研修やってみるか」といってくれた

アライ先生インタビュー(2) 「喫緊の問題ではないでしょ」という校長が、ついに「じゃあ、まず職員研修やってみるか」といってくれた

大井美佳さん 小田原市立橘中学校教諭

(2020.08.17)
 

大井美佳さん(写真右側)
小田原市立橘中学校教諭

途中2年のブランクをはさみながらも、教職歴22年という大ベテラン。ReBitとの出逢いをきっかけに、アライ先生として学校や保護者への理解促進に努める。写真はReBitの周年パーティーで代表理事の薬師とともに。

 

多様な性について学ぶことは、自分も目の前の人も大切にするきっかけに

 

「多様な性に関する教育に取り組もうとしたきっかけになったのは、2012年に神奈川県立総合教育センターで行われた人権教育講座でした。当時はまだ学生団体だったReBitとそこで出会い、『絶対にうちの学校に来てもらう!』と、鼻息荒くすぐさま連絡したことを覚えています。」

そう話してくださった大井先生は、多様な性について学ぶことは、目の前の人を大切にすることや自分を大切にすることに繋がる、そして自らが変わることで、社会が変わる第一歩になると信じて、アクションを続けられています。

今回は学校内での理解を促進するために具体的にどんなことをしたのかをお話ししていただきました。

「ReBitに職員研修や出張授業を依頼するだけではなく、学校内で取り組んだこととして、LGBT関連の書籍を購入して教室や図書室に置く、男女別整列の廃止、保護者懇談会で『ご理解をお願いします』『いつでもご相談ください』などのアナウンスもしました。」

実際に取り組みを始めた2012年当初、難色を示す管理職の説得には時間がかかったそうです。
  
「『喫緊の問題ではないでしょ』という校長が、ついに『じゃあまず、職員研修やってみるか』といってくれたときの喜びは忘れられません。」

 

継続し続けることで、「アライ」の輪が広がる

 

大井先生の学校では、学年が上がっても年に1回の授業を継続しているといいます。取り組みを継続する中で子どもや教員たちに訪れる変化にも喜びを感じていると話してくださいました。

「毎年新しい子どもたちが入ってくるので、毎年やり直しではありますが、1年生のときに学んだことは子どもたちの心にずっと残るみたいです。たとえば、『町中で、LGBTかな?と思う人を見かけても、普通に受け止められるようになった』とか『友達からカミングアウトを受けても、驚かないで寄り添いたいと思う』など、素直で前向きな反応を示してくれます。」
   
教員においても、知識だけではなく気持ちの上での変化を口にした教員が多く、「目の前の生徒のなかに、当然当事者がいるという前提で教育活動をしている」「いつカミングアウトされてもいい心構えができている」という声も聴くようになったとのことです。

「教員が異動した先でも取り組みを広げようと奮闘してくれることも大きな成果だと思います。」

 

結局は目の前の1人の子どもを見つめること

 

最後に、多様な性に関する実践を行いたいと思っている先生方へのメッセージをいただきました。

「教育課題は山積しています。しかしあらゆる教育活動を通じて、よりよい生き方を目指し、よりよい社会を築こうとする人間の育成が私たちの使命だと思います。私にとって多様な性についての教育は、結局は目の前の1人の子どもを見つめることでした。そして、私自身を見つめることでした。」

「押しつけるのではなく、引き出す。ともに学び成長する。そういう気持ちで、私たちのできる小さな一歩を重ねていきましょう。」

そう話す大井先生の顔は、生き生きとしていました。

ライター:認定NPO法人ReBit