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アライ先生インタビュー(3) 教員には意識改革、生徒には多様性を受容できる集団づくりが大切

千田晴久さん 元横浜市立中学校校長

(2020.08.17)
 

千田晴久さん
元横浜市立中学校校長

1983年から横浜市立中学校教員として採用され、3校で社会科教員として勤務。2009年から横浜市立中学校副校長となり、2015年から横浜市立中学校校長を6年間務める。

 

まずは自分の考えを見つめ直す

 

長年教員として子どもたちに関わってきた千田先生は、長い間、セクシュアリティのことで悩む生徒の話を聞いたり、励ましたりしながら相談に乗ってきたつもりでいましたが、その対応はその場しのぎの緩和的なものに過ぎないことに、違和感を覚えられていたそうです。

「まず、LGBTを『特性』と捉えていた自分の見方を見直し、『誰もが持っている個性』と変えていきました。『個性』なら、人それぞれで千差万別あり、『個』として尊重すべき対象であるからです。」

それから、生徒たちがセクシュアリティを由来に、自分自身を認めることができなかったり、自信を持てなかったりするケースがかなりあることが判ってきたとのこと。

「『性はグラデーション』という言葉がとてもしっくり来るため、そのような視点で悩める生徒の話を聞くよう心がけてきました。このように、私自身の見方や考え方を大きく変えていきながら生徒と接するうちに、多くの生徒が心の内を打ち明けてくれるようになりました。」

 

多様な性を受容できる学校づくりに挑戦

 


個性豊かな生徒たちが安心して生活できるようになるために、生徒集団の意識変革に取り組まれた千田先生。具体的には、あらゆる場面で、「個性」ということに触れながら「多様性」を受容できる集団づくりに努めたとのこと。

「私が務めていた学校は、外国籍の方も多く、様々な社会的背景を持つ人たちが住む地域にあります。そのような地域の事情も追い風となり、生徒たちの意識改革は順調に進みました。その結果、LGBTの生徒や国籍・民族・肌の色が違う生徒でも、分け隔てなく接することができるようになってきたのはこの6年間の成果だと言えます。」 

しかし、もっとも難しいのは教員の意識改革。大人は本音と建て前を使い分けるため、本当に意識改革が進んだのか判りづらく、また最大の壁となるのは教員の異動だと千田先生は指摘します。

「数年かけて意識改革を進めても、異動によって最初からやり直さなければならないことがありました。教員の意識改革は、一校だけで工夫・努力をするよりも、市全体で計画的に研修を行う必要があると思っています。」

 

時間をかけながら、少しずつ、一歩一歩進む

 

これから多様な性に関する取り組みに挑戦したいと思っている先生方にアドバイスもいただきました。

「まずは『自分自身』を見つめてみると良いと思います。そうすることで、『結構、人はグラデーションなのかも』と気づくと思います。私自身も、かわいいお花や小物が好きでいっぱい持っていますし、庭や部屋を花や小物で飾っています。」

「また、多様性を受容できる集団づくりが大切だと思います。生徒一人ひとりの良い面を見極め、様々な場面でフィードバックしてあげることです。こうした活動をこまめに繰り返していけば、生徒は自信を持つようになります。そして、自分の良い面をさらに伸ばそうとします。時間はかかりますが、明るく前向きな集団を作ることができます。このような集団になれば、悩める生徒も安心して教員に相談できますし、生徒同士で助け合うこともできるようになります。」
 
最後に千田先生はこの言葉で締めてくださいました。

「意識改革は一人でやろうとすると大変ですので、少しずつ仲間を増やしていきましょう。成果が出てくれば、賛同する教員が増えてきます。とにかく、躊躇せずに、生徒のために一歩ずつ進んでいきましょう。」

ライター:認定NPO法人ReBit