渡辺 大輔さん
埼玉大学基盤教育研究センター准教授。教育学(博士)
一般社団法人“人間と性”教育研究協議会幹事
〜主な著書〜・『マンガワークシートで学ぶ多様な性と生』(子どもの未来社、2019年)
・『性の多様性ってなんだろう?(中学生の質問箱)』(平凡社、2018年)
・『いろいろな性、いろいろな生きかた』(全三巻、監修、ポプラ社、2016年)
・『国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】』(共訳、明石書店、2020年)など。
第4回「にじいろ子ども応援団」勉強会&交流会(後編)
前編に引き続き、渡辺大輔さんにご登壇いただいた、第4回「にじいろ子ども応援団」勉強会&交流会の様子を私の感想と合わせてご紹介します。
「包括的セクシュアリティ教育」実施にあたって
そしてこの「包括的セクシュアリティ教育」実施にあたっては、差別のはびこっていない、安全な場で行われなければなりません。
そして生徒会を含め、若者リーダーが活躍できている、言い換えると子どもたちの権利が保障されている場である必要もあります。
それはつまり、まず、
①研修を受けた教師によって授業が行わること
②保護者をうまく巻き込むこと
③性的指向や性自認が尊重されている、差別を含んだいじめ等を容認しないこと
これらが満たされた場でなければならないということです。そのような環境を先生方がまず作る必要があります。
「包括的セクシュアリティ教育」のカリキュラムには人的・時間的・財政的資源を準備したり、セクシュアリティやジェンダーについてなどのキーコンセプト8つを盛り込んだりすることなどが求められます。
キーコンセプトは、家族・友情・恋愛などの「人間関係」、「価値観、人権、文化、セクシュアリティ」、社会規範やそれにまつわる暴力なども含めた「ジェンダーの理解」、ICTにも言及した「暴力と安全確保」、メディアリテラシーも含んだ「健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル」、「人間のからだと発達」、生涯にわたって考える「セクシュアリティと性的行動」、避妊や性感染症にもふれている「性と生殖に関する健康」、この8つです。
ひとつひとつについて語ると、そのひとつずつで複数の記事になってしまいますので…ぜひ皆さんご検索を!
日本の教育ではさまざまな科目で性について扱いますが、キーコンセプトを見てみると、ぜひもっと教育現場で取り上げてほしいな、と感じさせられます。そして学習者の主体性を重視していきたいものです。
本職が教師の私には身にしみるお言葉でした。
キーコンセプトはそのトピックごとに、年齢ごとの学習者の目標知識・態度・スキルがありますが、知識は「知る」「覚える」ではなく、「説明する」ことまで求めているのが特徴的です。
態度も「表現する」「気づく」などより具体的で、スキルも「実際にやってみる」「伝え合う」など実践的であることがわかります。思った以上に具体的で、子どもたちが自身で考え、行動する、ということを掲げているのがわかりますよね。
また、渡辺さんからは、「包括的セクシュアリティ教育」のキーコンセプトの授業での使い方・教え方についてもお話しいただきました。項目をピックアップしてみたり、目の前の子どもたちの発達ニーズについて考えてみたりするなど…。
年齢別に学びたいポイントをピックアップしてもくださいました。ReBitのような活動団体へのアクセスを実践してみる、というものも含まれています。
「包括的セクシュアリティ教育」というのは、性教育をとてもポジティブに捉えたもので、ひとりひとりの幸福追求・保障のためのものです。そして「規律規範」ではなく、私たちには何ができるか、という「人権」を基盤としているものなんですね。
講演後
その後、質疑・感想についてシェアの時間をとりました。
個々のジェンダーアイデンティティの学びが9-12歳のキーコンセプトの学びであることについて、遅いのではないかという渡辺さんの指摘について、参加者から教員側の人権意識や悩みについての話もシェアされました。ReBitでも性別違和を感じる年齢はもう少し早い段階であると、メンバーのライフヒストリーを見て感じています。
他にも、宿泊研修前の男女別の保健指導の見直しについて考えている、性分化疾患についての話、何事も「当たり前」ではなく「多くの人は」という傾向にとどめることなどがあがりました。
人権としての包括的セクシュアリティ教育について、ぜひ自分でもよく読みこんで、子どもたちに、そして社会に何ができるかを考えていきたいと感じる講演会でした。