今回、同教材を活用した新宿区立新宿中学校の道徳授業を見学しました。同校は、令和8年度の重点取組の1つに「リスペクトが見える学校づくり」を掲げ、人権教育やインクルーシブ教育の充実に力を入れています。授業を担当した3学年担任の加藤先生、野田先生、小松先生、そして教材を紹介した副担任の前田先生に、導入の経緯や手応え、生徒のリアルな反応を尋ねました。
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活用の背景:多様な生徒が「ちがい」を肯定的に受けとめるために
新宿中学校では、前田先生がリニューアル情報をいち早くキャッチし、道徳を担当する3学年の先生方へ提案したことから取り組みがスタートしました。 活用の背景にある思いを伺いました。
ATTKご利用の背景にはどのような意図がありましたか?
特に大きな背景としては、多様性に富んだ本校の実態があります。本校は特別支援学級に加え、外国にルーツをもつ生徒も多く、国際学級も併設しています。生徒はお互いのちがいを意識しながら関わり方を調整することを自然に行っていますが、それを振り返ったり自覚したりできる機会が必要だと考えました。本校では教科書教材だけでなく、行事や生徒の実態に合った教材を担任が分担して準備しているのですが、生徒の多様性を普段の学習活動の資源に高めていけるような、そんな教材を探していました。
中でも性の多様性に関する教材を選んだ背景にはどのような思いがありましたか?
私も含め、すべての人が性の多様性を構成する一人です。それを正しく知ることは、自分や相手を知る上で、とても大切なことだと感じています。自分と他者とのちがいを感じたときに、生徒にはそれを否定的に捉えず、安心して受けとめられるようになってほしい。正しい知識はそうした手助けをしてくれると考えています。
情報化が進み、どのような情報がどのような経路で生徒の元に届くかは大人のコントロールが効きません。だからこそ、性の多様性に関する正しい知識を、義務教育の中で生徒が学ぶ機会を担保することは、大人の役割だと考えています。一方で、性の多様性やLGBTQに関する授業やその取り上げ方まで含めて学校・学年で足並みをそろえるには大変な労力がかかります。その意味で、指導案や教材動画、授業用スライドがセットで準備されているATTKは使いやすいと思い、担任の先生に紹介しました。
授業者の声:多忙な先生の「授業化の壁」を超えるために
9月上旬、3年生の全クラスでATTKを活用した授業が行われました。授業を行った3名の先生に、ATTKの使用感や授業の感想を伺いました。
これまで性の多様性やLGBTQを授業で扱う場面はありましたか?
小松:私は社会科が担当なので、授業の中で話題に挙げることがあります。
野田:私は国語科の教員で、扱った教材の中で性の多様性やLGBTQと接点があるものはなく、取り上げたことはありませんでした。一方で、私は「多様性の尊重」という言葉がひとり歩きして、その中にある性のあり方や国籍といった多様性を構成する個別の「ちがい」にはあまり目が向けられていない現状に違和感を感じていました。いろんな人と関わるにあたって、生徒には知識としてもっておいてほしく、その意味で私は取り上げたい思いがあります。
加藤:私も数学科の教員で、あまり取り上げたことはありません。今回「LGBTQって知ってる?」と聞くと、生徒は結構知っているんだなという印象をもちました。
小松:社会科で教えたから!(笑)
野田:そっか、積み重ねがあったんですね。私は今回取り上げるのに難しさも少し感じましたが、実際に授業での生徒の反応を見ていると「この子たちは否定的な見方も悲観的な見方もしていないんだな」というのが印象的でした。
ReBit:どのクラスでも「カミングアウトを受けても、特別なこととしてではなく、そのままの関係性を続けたい」との反応が多く見られたことは印象的でした。一方で、学習感想では「聞いたことはあるけど今回の授業で詳しく知れた」との声も多くありました。ReBitの調査では、10代の7割以上がSNSから「LGBTQに関する否定的な言動を見聞きしている」とのデータもあります。今回、先生方にATTKを活用いただき、正しい知識を学年で共有する機会を用意いただくことができてよかったです。
ATTKを活用して良かった点はありますか?
野田:授業用スライドがあったことはありがたかったです。指導案だけ渡されても、すぐに授業を行えるかと言ったら正直難しいです。授業用スライドがあることで、授業のねらいや具体的な進め方がわかったのは良かったです。
ReBit:小松先生は導入時の授業用スライドにご自身の写真を挿入して、経験談を紹介していましたね。
小松:パワーポイントを編集して使用できるのが良かったです。また、私が便利だと思ったのは動画があることです。本文を読むだけでは生徒の関心を高めることができません。けれども、用意しようとすると、わかりやすくて丁度良い内容の動画を探すことに時間がかかります。その意味ですぐに使用できる動画と、それを活用した指導案があるのはよかったです。
加藤:3学年の道徳は、生徒の実態に即したり学校行事に関連付けたりして道徳の授業内容を検討しています。行事などの文脈がない時期は、道徳で何をしようか、内容を考えるのが難しい時期でもあります。そのときに、こうしたパッケージ化された教材があると取り組みやすいなと感じました。他の先生ともすぐに共有できるので、例えば新任の先生がいても、ATTKがあれば、学年で足並みをそろえた授業づくりができると思います。
小松:学年で気になる様子があったらいじめや情報モラルに関する題材を取り上げようとか、行事に関連付けて授業内容を考えようということはあっても、外から見えづらい性の多様性やLGBTQに関する内容は、そもそもそれを取り上げる文脈が学校で生じにくいように思います。じゃあ教えたいとなっても、教師が一から教材をつくるのは大変です。だからこそ、ATTKのようにまとまった教材があると、取り上げやすくなるのかなと思います。
ReBit:先生方、ありがとうございました!
生徒の気づき:性の多様性の学びから、お互いのちがいの尊重へ
新宿中学校の3年生は、性の多様性について考えた後、まとめでは国籍や好き嫌い、病気や障がいなど様々なちがいに触れ、学習感想をまとめていました。ちがいを受けとめ合う関係性や、自分のちがいが受けとめられた経験を想起して、それぞれの思いを深める姿が印象的でした。感想の一部を紹介します。
ReBitメンバーより
新学期が始まってすぐの多忙な時期でありながら、あまり準備に時間をかけすぎず、3名の先生が共通の学習の流れで行う授業づくりをサポートすることができました。小松先生の「外から見えづらい性の多様性やLGBTQに関する内容は、そもそもそれを取り上げる文脈が学校で生じにくい」のではないかとの言葉がとても印象に残りました。けれども、だからこそ、ATTKが授業づくりのきっかけとなることができ、とてもうれしく思いました。
新宿中学校の生徒の皆さん、先生方、ありがとうございました!
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