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先生集合!なんでも相談会(前編)

(2022.06.30)
2022年6月19日、オンラインイベント「先生集合!なんでも相談会」を開催しました。多様な性に関して普段から様々な配慮をしている先生やこれから何か取り組みたい先生などが、不安なことを相談したり、日ごろ思っていることをシェアしたりする場になりました。この記事では、実際にあった相談などを匿名化してまとめました。

―――中学2年生の担任です。制服選択制を導入している学校に勤務しています。自分のクラスのある生徒が、一度変更した制服を再度変更したいと言っています。今まではスラックスで通っていたのですが、校外学習の前日になって「スラックスではなく、スカートで行きたい」という希望があることがわかりました。同僚に相談すると、急にスカートを履くと周りの生徒も驚いてしまうのではないかと心配されました。私はできるだけ本人の気持ちを尊重してあげたいと思っているのですが、本人の希望と周りとの関係性を両立させるのが難しいなと感じています。

まず、セクシュアリティにはゆらぎがあると言われています。自認する性がぶれない人もいれば、成長するにつれて違和感が出てくる人、逆に違和感がなくなる人、あるいは日によって自分のジェンダーが変わるという人もいます。そうした場合、一度制服を決めたら後からは変えられないというルールだと、希望を受け止めてもらいにくくなってしまいます。

大切なのは、その日その時に着たい服が着られるということです。そのためには、誰がどんな理由で制服を変えることがあっても、いつでも何度でも変えてよいという認識を学校内で共有しておくといいですね。これはルールとしてだけでなく、先生一人ひとりの認識まで落とし込めると理想的だと思います。性別を理由としていてもしていなくても、制服を変えることに理由を求められる必要がなくなるといいと思います。

また、いわゆる名簿上の女子生徒がスラックスを履くことは問題ないことが多いですが、名簿上の男子生徒がスカートを履くとなると、ハードルが高いと思います。これは、男性とされる人がスカートを履くということが、社会的にメジャーでないことが要因です。でも、その服装のほうがしっかり勉強に取り組めるということであれば、自認する性にあった服装をすることは子どもの権利ですし、そういった環境を整えるのが私たち大人の役目だと思います。

―――私の学校にはトランスジェンダーの生徒がいますが、多目的トイレが一ケ所しかなく、しかも「自分の学年の階のトイレを使う」というルールがあるため、困ることが多いです。

こういったルールによって困る子どもは、性別違和の生徒だけではないと思います。たとえば、トイレに誘われてもみんなと一緒には行きたくないと感じている生徒や、自分の階のトイレがいつも混んでしまうので他の階のトイレも使えたらいいなと思っている生徒がいるはずです。他学年とのトラブルを防ぐために、学年ごとに使用できるトイレを限定したいという事情が学校側にもあるのかもしれませんが、何かを禁止するルールを見直すいいきっかけになるかもしれません。

現在、理由によらず、他の生徒と一緒のトイレを使いたくないという生徒が、教職員用トイレや来客用トイレを使うという対応が比較的多くの学校で取られています。ただ、申告制にするとカミングアウトをしている生徒はそのトイレが使えますが、カミングアウトしていない生徒や、言語化はできないが男女に分かれているトイレを使うのが嫌だなと感じている生徒は使うことが難しくなってしまいます。

代わりに「だれがどこのトイレを使ってもいい」という全員に向けたルールの変更で、より多くの人の困りごとが解消できるはずです。ある学校では、教職員用トイレの一つで、性別表示のマークを隠すことにしたそうです。「このトイレは、女性でも男性でも自分の性別がわからない人でも、どんな性別の人であっても使っていいですよ」ということがわかるようにし、全ての人が使えるトイレとして開放する仕組みにしているわけですね。こういった事例を参考に、ぜひご自身の学校でできそうな取り組みを同僚の先生方と相談しながら、学校全体で考えていただけるといいと思います。

後編につづく

ライター:認定NPO法人ReBit