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半年間の取り組みをご一緒して~ReBitから見た江東区立第三砂町小学校の実際~(後編)

(2026.03.18)
前編では、東京都江東区立第三砂町小学校(三砂小)の取り組みについて、ReBitの教職員研修を受講した後、LGBTQの子どもたちも安心できる学校環境づくりを実践してくださった先生たちにお話をうかがいました。後編では、ReBitがご一緒した半年間で、先生たちが具体的にどういった取り組みをされたかについてご紹介します。


学校基礎データ


東京都江東区立第三砂町小学校
児童数563人(2025年3月12日現在)

活用した資材


Ally Teacher’s Tool Kit 安心な学校をつくろう編 アクションシート
Ally Teacher’s Tool Kit 小学校高学年で授業しよう編 キット本体(DVD、授業案、児童用ワークシート)
アライステッカー

取り組みのステップ


1.ヒアリングと年間スケジュールの作成
2.教職員研修の実施、アクションプランの作成(ReBit作成の「アクションシート」を活用)
3.アクションプランのモニタリング
4.児童向け授業の準備(ReBitの教材『Ally Teacher’s Tool Kit 小学校高学年で授業しよう編』を活用)
5.児童向け授業の実施(小学5年生3クラス)

5月 校長先生へのヒアリング


「これまでに研修を受けたことのある先生のほうが少ないので、多様な性のあり方について、まず教員が知ることから始めたい」とのご希望を校長の淺野先生から伺いました。

年間スケジュール作成


先生たちと一緒に年間の実施計画を考えました。初回のお打ち合わせにご同席いただいたのは、校長の淺野先生、副校長の山内先生、人権教育担当の谷本先生、道徳推進担当の木村先生です。ReBitからは下記の実施スケジュールをご提案しました。

8月:①全教職員対象の研修をReBitが実施、「多様な性のあり方を包摂した学校環境づくり」について先生が学ぶ機会を設ける ②研修内容を踏まえ、「三砂小ですぐに取り組むべきアクションプラン」を考える
9月:夏休み明けに、アクションプランの取り組み状況をモニタリングする
10月以降:引き続き先生たちが「多様な性のあり方を包摂した学校環境づくり」に取り組む
11月:児童向け授業に向けた模擬授業と研修をReBitが実施する
12月:5年生3学級の担任が児童向け授業を実施する

8月 ①教職員研修の実施


子どもや保護者からの相談・カミングアウトへの対応や、LGBTQの子どもたちも安心して過ごせる環境づくりを先生たちができるようにするために、夏休みの研修では下記の4点を扱いました。

・多様な性のあり方に関する基礎知識の整理
・相談やカミングアウトを受けた際の対応
・子どもたちが困りやすい場面
・先生たちにできる工夫

この研修内容をふまえて、先生たちにはアクションプランを作成していただきました。

8月 ②アクションプランの作成


ReBit作成の「アクションシート」を活用しながら、学校におけるさまざまな場面ごとに、多様な性のあり方を包摂したものになっているかについて、先生たちにセルフチェックしていただきました。



三砂小の取り組み状況を「継続」「新規」「中止」の3つに分類し、よりよい環境づくりに向けて重点的に取り組む「アクションプラン」を作成いただきました。三砂小では、下記の項目となりました。

・児童を呼ぶときに全員を「さん」で統一する
・「お母さん・お父さん」ではなく、「保護者の方・ご家族」等の包摂的な呼称を選ぶ
・「女子~」「男子~」等、性別で分けない声かけを工夫する(例:力持ちの人手伝って等)
・児童が自分で選択できるように、選択肢を増やすようにする(例:画用紙の色、学習ツール等)
・髪型や服の色・デザイン等は個人の自由であり、性別に関係ないことを児童に伝える
・着替えやトイレで困ったら、相談できることを児童に伝える
・保健室で着替えられることを児童に伝える
・相談できる目印として、教員はアライのステッカーを名札に挟む
・1階の多目的トイレが使えることを、児童に伝える
              

9月 アクションプランのモニタリング


子どもたちには「先生たちも夏休みにさまざまな性のあり方があることを勉強したから、今日から『さん』付けで呼ぶようにするし、男女で分けるような指示はしないようにするね」という話をして、先生たちによる具体的な取り組みがスタートしました。アクションプランを実行する中で、先生たちが9月に実施した振り返りアンケートには、以下のような感想が寄せられました。

「多様な性のあり方について、より意識して指導できた。」
「教員が意識するだけで、みんなにとって過ごしやすい環境に変わっていけそうな気がした。」
「子どもたちに『なんでも相談してよい」と指導すると、性のあり方に関するものかどうかは問わず、相談する子どもが増えた。」
「高学年は理解できているようだったが、低学年の児童にも少し理解が難しいとしても話をして、種まきをしておく必要があると思った。」
「教員が意識すると、子どもたちも『パートナー』と言うようになったり、順番決めは『出席番号順』や『誕生日順』となる等、子どもたちにも変化が見られた。」

先生たちにとって、自分たちの意識の変化が子どもたちにもポジティブな影響を与えることや、新たな取り組みが効果的であることを実感しつつ、2学期以降も継続的に実施していく項目を確認しました。「アライステッカーを名札に挟むこと」もより広めていくことになりました。


11月 児童向け授業の準備


全教職員が再集合したReBitの研修では、授業案とともに先生たちの心構えも確認し、先生も子どもたちも安心しながら授業に参加できることを大切にしました。また、実際の授業で担任の先生が子どもたちに多様な性のあり方について教えられるようにするために、グラウンドルールや『Ally Teacher’s Tool Kit 小学校高学年で授業しよう編』の活用の仕方を研修しました。



授業をきっかけに、先生が児童から相談やカミングアウトを受けることもあります。研修では、その際の対応フローについても確認しました。たとえば、他の先生や外部機関との適切な連携の仕方や、カミングアウトの範囲に関する児童本人への意思確認の仕方等について、学年団ごとに集まって考えていただきました。先生による授業が「ゴール」ではなく、多様な性のあり方を包摂した環境づくりや相談体制の整備に向けた「きっかけのひとつ」であることを全員で確認しました。


11月の教職員研修後、先生たちの意識や実践には、以下のような変化がありました。

「『子ども時代の実際に困った経験』が聞けたので、教員としてより危機感が持てた。」
「2回目の研修では、夏の研修内容を再確認できた。」
「アライステッカーを身につけることに抵抗があったが、相談しやすい先生の目印になると聞き、研修後すぐに名札に挟んだ。」
「普段から多様な性に関するニュースや記事を見るようになった。」
「もし児童から相談を受けたら正しく対応できるか不安もあったが、『先生も勉強中だから一緒に理解していきたい』という姿勢で話せばよいとわかったのがよかった。」
「席替えは座席位置を男女別に指定しない形に変更したが、子どもたちはすんなり受け入れている。」
「『女子』『男子』といった声がけが、むしろ不自然な雰囲気になった。」
「当初は教員が意識しないとできなかった取り組みが、今は自然とできるようになった。」
「班決めの時、子どもたちが授業で学んだことを踏まえて、自分たちで相談しながら性別に関係なく組むようになった。」

12月 児童向け授業の実施


5年生の3クラスにおいて、担任の先生が子どもたちに授業を行いました。研修で紹介したReBitの教材を使いながら、「多様な性のあり方」や「さまざまな『ちがい』を尊重すること」について伝える先生の話を、子どもたちも一生懸命聞いてくれました。6色のレインボーについて話したり、いつでも相談してよいことを伝えたり、クラスに多様な性に関する書籍を置いたりと、各クラスの先生たちがそれぞれのやり方で、子どもたちにメッセージを伝えていたのがとても印象的でした。大人が変わると子どもたちも変わっていく、そんな場面を目の当たりにした授業でした。


半年間の伴走支援を終えて


この半年間、さまざまな立場の先生たちが協力しながら、チームとして携わってくださいました。私たちReBitも、先生たちが本来持っているパワーや教育に対する思いを知ることができ、非常に多くの気づきや学びが得られた半年間でした。三砂小では今後も毎年、5年生で性の多様性の授業を行うことに決めたそうです。また、多様な性のあり方を包摂した環境づくりは、新年度は4月から取り組みを進められるよう準備中とのことです。三砂小の皆さん、本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!


いつも一緒にいる先生だからできること


三砂小のように、まず先生たちが「正しく知り、考え、行動に移す」ことで、子どもたちが息をしやすくなる環境は、どの学校でも確実につくれます。たとえば、名簿上の性別に基づいた「さん」「くん」の呼び分けで困る子どもたちがいますが、先生が意識を変えて「さん」で統一して呼ぶことは、今日からすぐにできる環境づくりです。きっと救われる子どもがどの教室にもいるはずです。

「男子集合!」ではなく「力持ちさん集まって!」のように、日々の言葉選びを「性別を限定しない、より包摂的な表現」にアップデートすることは、目の前の子どもたち一人ひとりを「性別」という枠組みではなく、「その子自身」として尊重することに他なりません。あるいは、保健や道徳の中だけで多様な性のあり方について扱うのではなく、他の教科や活動の中でも意識していただくことも、子どもたちと日常的に接している「先生」という立場だからこそできる工夫です。

この記事を読んでくださっている皆さんも、ReBitの研修や伴走支援をきっかけに、ぜひアライ先生になってください。全国各地の学校において、LGBTQも含めたすべての子どもがありのままで過ごせるよう、多様な性のあり方を包摂した学校環境づくりを実践してくださる先生を募集しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

ReBit教育事業部 メールアドレス: education@rebitlgbt.org
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